細菌ADPリボシル化酵素の基質認識機構と その細胞膜透過に関する研究

摘要

ADP-リボシル化は,NAD+からADP-リボースを付 加することによって定義される可逆的な翻訳後修飾で ある。さらにADP-リボシル化は,あらゆる生物界で 広く用いられている.このシステムは,おそらく細菌 に由来し,種間、種内シグナル伝達やストレス応答な どに機能している.当初,細菌毒素として,コレラ毒 素がヘテロマー Gタンパク質のGsaの特定のアルギニ ンをADPリボシル化すること，ジフテリア毒素が真 核生物伸長因子2 （eEF2）をADPリボシル化すること が見いだされた.その後ARTC, ARTDファミリーは， それぞれコレラ毒素，ジフテリア毒素に関連した触媒 ドメインの折りたたみを特徴とすることから命名され た.ヒトでポリADPーリボース ポリメラーゼ（PARP） は,DNA損傷の修復に関与する重要な酵素であり， ARTDファミリーに属する.一方，細菌毒素のC3毒 素やイオタ毒素（la）は，それぞれRhoAやアクチンを モノ ADPリボシル化するが，これらはARTCファミ リーに属することが分かっている.