ヨコナガヤ

摘要

大阪市内の幹線道路沿いに計画された，小さな木造建築である.かって田畑であった土地が道路と地下鉄の整備のために切り取られ，いわゆるへタ地として残された.長辺は道路に対して59m接道し，短辺は4mの綺麗な三角形の敷地であった.商いをするにはこれほどの間口はちってこいで，かつてはテン卜を張っただけの八百屋とたこ焼き屋が店を構えていた.テン卜は歩道上空まで覆い自ら商店街を形成していた.その公道にはみ出した領域にはルールとは別の豊かさがあった.店主の高齢が理由で閉店した後は，歩道は青空を取り戻し，敷地は空き地となった.間口の広い土地だったため不法投棄が相次ぎ，トタンの壁は落書きで埋め尽くされ所有者も困っていた.その敷地に美容室を計画することからこのプロジェクトはスタートした.敷地にゆとりのある西側に求められた美容室のプランを12,740mmでまとめた.間口に対して敷地の過半は残っていたので，多目的に使える軒下と貸し事務所を提案し実現した.両テナン卜は別ではあるが見通せるように短手方向には壁を設けず，耐震要素は105角の片筋交いとして緩やかに領域を分けた.都市の中で放置されていた場所に木架構が立ち上がり，道との近さを体感した時に，この事務所を私が借りることを決断した.設計事務所のサテライ卜として使用し，地域の人びとの多様性を受け入れる場所になればとドリンクスタント(ミックスジュ一ス屋)も併設した.