開腹肝切除術における助手の極意

摘要

ほとんどすべての肝切除術において，肝の授動?脱転，主要脈管の剝離?テーピング，肝十二指腸間膜のテーピング，右副腎の剝離（右葉系の切除時）は，手術の前半，肝実質切離に至るまでに行われる「ルーチンワーク」である.これらを滞りなく行うことが手術の成功のカギを握るといっても過言ではない.また，肝実質切離は，術者と助手の共同作業であり，出血が少なく，胆汁漏を起こさない手術とするためにも両者の阿吽の呼吸が重要である.助手の役割は，これらすベての手順を正確に把握し，実行するとともに，術者が「気持ちよく」施術できるようにさまざまな面で気 を配る必要がある.術者?助手ともに「気持ちよく」終えた手術後は，合併症も少なく患者の良好な予後につながることを実感している肝臓外科医は多いと思われる.近年は腹腔鏡下肝切除を中心的に施行する施設が増えており，若手が開腹肝切除の助手を務める機会も徐々に減少しつつある.当院においても，肝切除の約60は腹腔鏡下に行われており，開腹肝切除の適応となるのは「巨大肝腫瘍」「高度脈管侵襲を伴う肝腫 瘍」「4か所以上の肝切除」など難易度の高い症例であり，助手の果たす役割も大きくなっている.本稿では「助手」の視点から，すべての開腹肝切除の共通するステップを中心にそのtips pitfallsについて私見も交えて当施設の方法を紹介したいと思う.