竹内勤会長の司会のもと,第117回日本内科学会講演会において特別講演の機会をいただき,大変光栄である.1961年にガガーリンが人類初の宇宙飛行をしてから半世紀以上が経つ.人類はこの間に, ロケット技術,宇宙滞在技術ならびに地球への帰還技術等の有人宇宙技術を獲得してきた.今や,有人宇宙探査は,国際宇宙ステーション(International Space Station : ISS)での成果や知見をもとに,地球低軌道から月や火星を目指している.そして,宇宙商業利用の促進で,一般人の宇宙旅行がそう遠からぬ未来に実現可能となる時代を迎えようとしている.一方,地球上では,気候変動に誘発される自然災害の増加や新型コロナウイルス感染症のパンデミックの例が示すように,人類活動の活性化やグローバル化は,地球資源が有限で,その限られた環境で生きることの息苦しさを我々に感じさせている.本稿では,宇宙探査の現状,月や火星に向けての生存圏拡大を支える宇宙医学や宇宙滞在技術,そして,宇宙開発の地球貢献に関して紹介する.
展开▼