糖尿病診療の新たな展開

摘要

1.糖尿病の分類:糖尿病は，インスリン作用不足による高血糖を主徴とする症候群である.国民健康?栄養調査では，「糖尿病が強く疑われる者」を，HbA1c(hemoglobin A1e)値が6.5以上，または「糖尿病治療の有無」に「有」と回答した者と定義し，全国推計値を算出している.その結果，患者数は経年的に増加を示し，2016年には約1,000万人に達していると報告されている.日本人にとってcommon diseaseと言える糖尿病は，その成因により，4つのタイプに分類される(表1).主には自己免疫機序によってインスリンを分泌する細胞である膵β細胞が破壊され，やがてはインスリン分泌不全に至る「1型糖尿病」，遺伝子異常やその他の特定の条件等により，相対的，絶対的インスリン作用不足に至っており，その原因が明確な「その他の特定の機序，疾患による糖尿病」，妊娠に伴い糖尿病に至らない軽い糖代謝異常となり，周産期のリスクが高くなる「妊娠糖尿病」ならびに2型糖尿病である.2型糖尿病は，原因の明確でないインスリン分泌不全とインスリン抵抗性によりインスリン作用不足に陥る疾患である.インスリン分泌不全とインスリン抵抗性の程度のバランスは各個人で多様である.言い換えると，除外診断的に診断され，個々の病態が極めて不均一な疾患と言える.日本においては，本病型が糖尿病患者の90以上を占める.