安定ラジカJレカチ才ン種が示す奇抜な性質と機能

摘要

開殻π電子系分子は，不対電子に由来するスピン·磁気特性，半占有軌道に由来する容易な酸化還元特性や特異な光物性を示す。長期間分解しない開殻π電子系分子は，磁性材料や電気伝導性材料，近赤外吸収材料，蓄電材料の有カな構成成分として学際的な研究領域で常に注目されている。電子ドナー性分子を酸化することで発生可能なラジカルカチオン種は，高い安定性をもつことから開殻π電子系分子として有カな候補である。ラジカルカチオン種では，置換基だけでなく対アニオンにより分子および集積状態における物性や機能が制御できることから，様々な研究が展開されてきた。フエノチアジンやその類緑体であるジヒドロフエナジン，フエノキサジンは，中央の6員環に形式的に8つの π電子をもつ代表的な電子ドナー性分子であり（図1)，化学的または電気化学的に容易に酸化されて安定なラジカルカチオン種に変換可能である。筆者らは，これらフエノチアジンやその類縁体に注目し，種々の分子修飾を検討してきた（図2)。