陸上養殖の機能と役割

摘要

世界における水産物の生産は1990年代に天然資源の 減少やその減少を食い止めるための漁獲規制の影響に よって漁獲漁業が頭打ちとなり，その後も継続される右 肩上がりの需要を養殖業によって賄う形で生産量が増加 し続けている。現在，養殖生産量は漁獲漁業の生産量に 追いつくところまできている。一方，日本では1980年 代をピークに漁獲量が減少し，養殖業もわずかながらも 減少を続けている1しこのような状況の中，人口の増加 に合わせた安定的な水産物の増産のみならず，水圏の水 産資源を守りつつ，環境にも配慮した水産業が求められ ている。特に養殖業に関しては世界的に増産傾向にある が，生産には限界があり，効率化と分散化が求められ る。養殖業の効率化,分散化に関しては様々な養殖技術 の高度化による集約的養殖の発展と沖合や陸上といった ようにこれまで養殖業で利用されてこなかった場所を養 殖の場として利用する多様化が求められている。そこで 本報では，我々人間の生活圏に一番近い場所で行われて る陸上養殖に着目し，陸上養殖技術の特性を踏まえたうえでその機能と役割を示し，硯状と今後の可能性につい て解説する。