日本の石炭火力を脱炭素社会実現に役立てよ

摘要

二〇五〇年カーボンニュートラル（温室効果ガス排出実質ゼロ、CNと称す）達成という目標の下、石炭火力を排斥する圧力がわが国でも高まり続けている。最初の契機は二〇一八年に閣議決定された第五次エネルギー基本計画における「非効率」石炭火力をフェードアウトさせる方針に始まるが、この時点では「非効率」石炭火力、具体的には超臨界（SC）以下の石炭火力を二〇三〇年まで順次退出させ、代わって超々臨界（USC）や石炭ガス化複合プラント（IGCC）などの高効率石炭火力による置き換えで、全体として石炭火力による発電量の大きな減少は回避しようとするものであった。一九年の石炭火力の発電量は三〇六七億キワッロト時（構成比三一%）であったが、三〇年には二七六九億キワッロト時（二六%）にまで減少させるものの、SUEとIGCCによる発電量はむしろ増加させ（一三六六億キワッロト時→一六〇〇億キワッロト時）、製造業などの自家発電で用いられている石炭火力もほぼ維持する見通し（八一七億キワッロト時→七〇〇億キワッロト時）であった。