甲状腺疾患の診断とピツトフオール

摘要

はじめに：甲状腺疾患の疫学：甲状腺の疾患は本邦に約1,000万人とも言われ，国民病となっている.甲状腺乳頭癌は，MRI(magnetic resonance imaging)や剖検からの報告で潜在癌まで含めると，少なくとも10%~の国民が罹患しており，最も罹患数の多い癌と言える.従って，最大径1cm以下の微小乳頭癌の非手術経過観察(active surveillance)の議論が始まっている.また，甲状腺に超音波検査をすると，約4割には所見があり，腺腫様甲状腺腫や腺腫，囊胞が認められる.最近では，頸動脈超音波検査の際に甲状腺に腫瘤が発見される症例やFDG-PET (fluorodeoxyglucose positron emission tomography)で甲状腺に慢性甲状腺炎により集積があり紹介になる症例も多く経験する.慢性甲状腺炎(橋本病)は女性成人では1/4人以上，Basedow病は1?3/1,000人で特に若い女性に多い疾患である.従って，本邦の国民の2人に1人は何らかの甲状腺疾患を持っていることが推測される.甲状腺疾患は，大きく腫瘍と機能異常に分けられるが，本稿では，甲状腺機能異常の評価とピットフォールについて概説する.