水都·大阪の水環境

摘要

作家·宮本輝は空間に余白を残す。登場人物は過去に問題を起こした心優しい人であったり，良心をもった悪い奴であったりして，いずれも不完全な人ばかりである。そんな人の心情を空や川，海といった空間の一片を使って表現し，残りの余白をどう想像するかは読者に任せている。大阪市内を流れる安治川を舞台とした「泥の河」でも，話は専ら川のほとりで進み，大きく川が描かれるのは最後の主人公と友達との別れの時だけである。彼が描くたいていの話は，主人公にとって幸せな結末なのか，悲しい結末なのか分からないまま終わり，その終わり方をどう感じるかは，読者に無造作に投げつけられる。読者が余白をどのように想像したかに任せられるので，読後には余白はそのまま余韻となる。(もちろん本稿筆者の私見である。)。