自動車用錫めっきのスライディングにおける初期摩耗状態観察

摘要

錫めっき接点は、安価で信頼性が高いため、一般的なコネクタでは電気接点のめっきとして広く用いられている。一方、錫めっきは非常に柔らかいため、コネクタの挿抜によるめっき摩耗の発生や、振動、冷熱サイクルなどでの接点摺動による微摺動摩耗現象による接点障害の発生要因となっている。そのため本研究では、摺動の基本となる錫めっき銅合金接点の半球－平板接触での一方向でのスライディングにおける摩耗現象の詳細な観察を行った。その結果、一般的に言われている摩耗とは違う特異性が観察された。一つ目は、摩擦係数の荷重依存性があり、荷重が高いと摩擦係数が低くなること、二つ目は、荷重が低いと摩耗が早く進行する傾向となることが見られた。FEM接触解析や、ミンドリンの摩耗理論から推察すると、これらの現象は、硬い金属上に軟らかい金属被膜があり、かつ、半球面－平面接触による場合に発生する特有な現象と考えられる。