総論：緩和ケアと終末期医療疼痛管理の観点から

摘要

世界保健機構（World Health Organization ： WHO)は，緩 和ケア（palliative care)とは,『生命を脅かす疾患による問題 に直面している患者とその家族に対して，痛みやその他の身 体的問題,社会心理的問題,精神活動的問題を早期に発見し， 的確な評価と対処(治療処置）を行うことによって，苦しみ を予防し,和らげることで，生活の質(quality of life ： QOL) を改善する治療法である』，と定義している1'。つまり，この定 義から考えると，緩和ケアは治療によって生じる痛みや苦し みをも緩和する治療であるといえる。一方，終末期医療 (terminal careもしくはend of life care)とは，治療不可能な 疾病終末期に行われる医療および看護のことであり，緩和ケ ァとは明確に分けて考えなければならない。終末期という概 念や葉については，WHO,国際連合,各医学会などによる 公的で明確な定義が存在しない。この背景には，尊い生命の余 命や終末を厳密に予想することは難しく，その社会的あるい は文化的背Kによつて思想心理が異なるためと考えられる。