猫の消化器型リンパ腫

摘要

消化器型リンパ腫は猫において一般的で，猫の腸管に発生する腫瘍の55 %を占めている'、一方,犬における消化器型 リンパ腫の発生率は5 ~ 7 %と低い2)。病変はびまん性に存 在,あるいは限局性に腫瘤の形成を認める。消化器型リンパ腫 の治療計画を立てるうえで外科治療を検討するのは主に腫瘍 が限局性に腫瘤を形成するタィプであり，①消化管閉塞を 伴っている場合，②消化管穿孔力￡生じている場合，f匕学療法 により消化管穿孔が懸念される場合に実施される。消化器型 リンパ腫の標準治療は化学療法であり，化学療法前に消化管 に閉塞や穿孔の所見がない症例に対して外科治療を行うべき か議論の余地がある。しかしながら，中/高悪性度消化器型リ ンパ腫(Intermediate/High grade alimentary lymphoma ： I/HGAL)の猫の症例に対して化学療法を実施した報告では 17 %で消化管穿孔が認められており3)，とくに消化管の全層 にわたつて病変が認められる症例では，化学療法による消化 管穿孔のリスクを想定して，治療開始前に外科的介入を行う ことも考慮される。今回，猫の空腸に発生したHGALに対し て,化学療法開始前に外科治療により腫瘤を切除した症例を 紹介する。