猫の肥満細胞腫の挙動を予測する綱と治療編

摘要

肥満細胞腫(mast cell tumor ： MCT)は猫の皮膚腫瘍の多 くを占め，臨床的に皮膚型,脾臓、内臓型,消化管型の3つの型 に分類される。多くの皮膚MCTが外科的摘出のみにより長期 管理可能な一方で，脾臓、内臓型MCTでは診断時にすでに多 臓器転移を伴つている症例が多く全身性疾患となりやすい。 この臨床型分類は各症例においてMCTの生物学的挙動を予 想し治療方針を立てるうえで有用であるものの，一方で皮膚 腫瘤と脾臓や肝臓病変を伴うような症例では原発病巣の特定 が困難であり，各症例において総括的な評価に基づいた臨機 応変な治療判断が必要となる。近年，猫のMCTに関して比較 的症例数の多い興味深い文献が複数発表され，本稿ではこれ ら文献のデ一タを紹介しながら各臨床型における猫のMCT の診断および治療を要約する。