3生物系におけるシグナル伝達とその計算·通信システムへの潜在的な応用

摘要

細胞シグナル伝達は、細胞通信にとって極めて重要である。これは、生細胞の生物機能を支えるシ グナリング·パスウェイ·ネットワークによって記述される。細胞シグナル伝達の分子メカニズムに 備わる頑健性（ロバストネス）によって、細胞シグナル伝達の情報処理メカニズムを活用した未来の通 信ネットワークを構想する際の、重要なヒントが得られる。本稿は、細胞シグナル伝達の計算面での 課題に備わる重要な側面について論じる。具体的には、（1）細胞シグナル伝達の中核情報を形式的に 表現する方法、（2）フィードバックを備えたパスウェイ·ネットワークから固定点を得る方法、（3）誤 り符号訂正によって情報をシグナル伝達パスウェイ中で符号化する方法、である。その目的は、例え ばパスウェイの非構造化特性を踏襲したまま、系の耐障害性を向上することにある。こうした結果は、 将来の画期的な通信ネットワークの基礎となる。頑健性などのファクタについて高い性能を持つ系に とって、生物学的なシグナリング·パスウェイ·ネットワークは大いに参考になる。