私はもともとインターベンシヨナリストになるつもりで，大学院では動脈硬化のメカニズム解明を研究テーマに選びました.国内留学先の千葉大学第二内科齋藤康教授の推薦で，1997年にワシントン州シアトルの The Hope Heart Institute (HHI)という研究機関に留学し，そこで血管平滑筋細胞内シグナリングの基礎研究を継続しました.ただHHIは，小さい研究所で研究設備も限られており，「このままでは自分の研究を発展させられないかもしれない」という危惧を早々に抱きました.そんなとき，当時口サンゼルスの南カリフォルニア大学で小児科レジデントをしていた新潟大学同級生(齋藤昭彦先生：現同大学小児科教授)がシアトルに遊びに来ました.留学先に対する私の愚痴を聞いた彼は「それじゃ，臨床 やったら？アメリカの臨床は素晴らしいよ！」と，それまで考えたこともないことを助言してくれました.単純な私は，それならやってみようかとUSMLE問題集を買い込んで，実験の合間に勉強をして数力月後に合格しました.ただ合格はしたものの，点数があまりに低く，レジデンシー応募は現実的ではありませんでした.そこで，やはり本分の研究を頑張ると決め，自分の研究を発展させられそうな研究室を探しました.ちようどその頃，シアトル留学組の神戸大学の奥田正則先生(現兵庫県立淡路医療センター循環器内科部長）から，彼の研究室のボスが近々出身大学であるロチェスター大学に循環器科主任教授として栄転する予定で，移籍先で働いてくれるフェローを大募集中との話を聞きました.
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