SASPによる慢性炎症とその制御

摘要

1961年Hayflickらにより，ヒトの正常細胞の培養を おこなうと，ある一定回数の分裂したのちに恒久的な 増殖停止を起こすことが明らかになったこの分裂限 界を迎えた細胞は老化細胞とよばれている.発見当初， 老化細胞は生体内の細胞を培養したことにより生じた アーティファクトではないかと疑われていたが，実際 に生体内において老化細胞が存在することや，加齢と ともに生体内に蓄積することが示されている.老化細 胞では，炎症性サイトカイン，ケモカイン.細胞外マト リックス分解酵素や増殖因子を分泌するSenescence-Associated Secretory Phenotypes (SASP)とよはれる 現象が起き，周辺の微小環境に影響を与えることで， 動脈硬化や糖尿病をはじめとする様々な加齢性疾病を 引き起こすことがわかっている.また老化細胞を生 体内から除去することで，加齢性疾病が改善され，健 康寿命が延長することが示されている.本稿では， 老化細胞が関与している肺疾患に触れつつ，その要因 であるSASPの制御機構について解説する.