(その13)樹脂鋳型法で腐朽を見る

摘要

木材の接着の仕組みについては色々と説がある が，孔隙に接着剤が侵入し硬化することによって 接着力が生じるのもその一つであるとされてい る。合板の木材部分を化学的に除去し，残った接 着剤層を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察すると， 樹脂が道管などに入って固まった鋳型が認めら れ，この説を裏付けてきた。いわゆる投鋪効果（ア ンカー.エフェクト）である（佐伯浩ほか：木 材学会誌，21,283-288 (1975))。観察しようと思う対象物に樹脂を注入して硬化 させた後，対象物のみを取り除いて樹脂の型を観 察する手法は樹脂鋳型法（レジン.キャスト法） と呼ばれ，医学の分野では体内に巡る血管の様子 を立体的に示したり，木材組織の分野でも細胞配 列や空隙構造を観察する手段として活用されてきた。