機械設備の保護装置を対象としたモニタリングシステムの提案－フィールドデータに基づく保護装置の有効性検証

摘要

ドイツでは，スマート工場の実現を目的とした新たな技術戦略として第4次産業革命（Industry4.0）が進展しつつある．この構想を端緒として，日本の安全分密でもセンサーやIoTなどの活用によって安全の“見える化”を実現し，人と機械が現場と環境の状態を自律的に判断して安全で効率的な生産を行うシステムの開発が進みつつある．この具体例に，筆者らが提案している支援的保護システムがある．このシステムでは，安全が確認できないときは機械を停止させる安全系と，このときの機械停止をできる限り減少させるフォールト·トレラント系の階層化構成によって，安全で生産性の高いシステムの構築を目指す．しかし，支援的保護システムのように対称誤り特性を有するセンサーやIoTを有する機器をシステムに適用する場合は，その適用限界を明確にするとともにシステム構築方法及び有効性検証の方法について十分な検討が必要である．また，安全分野で使用される重要な機器に機械設備の保護装置がある．しかし，実際の現場では，“意図する使用”以外での使用や想定外の環境条件などの影響が大きいとの意見（仮説1），作業性や生産性を優先して保護装置を無効化することも多いとの意見（仮説2），及びリスクホメオスタシス仮説の観点からは保護装置の使用がかえって危険行為を招くとの意見（仮説3）もある．そこで，これらの仮説を検証するために，フィールドデータに基づき機械設備の保護装置の有効性検証を行うモニタリングシステムの検討を試みた．この場合も第4次産業革命で利用されているセンサーやIoTなどの技術が効果的である．以上のような技術によって安全の“見える化”を図り安全で生産性の高いシステムを構築することで，安全は概念としての”Safety”から実態を伴う”The safety”への展開が可能となる．