繊毛虫の生命現象を司る鍵物質

摘要

原生生物にかかわらず，生物界には様々な相互作用が存在する。異種間では捕食，寄生，共生に見られ，また同種間では性現象として確認できる。これらは，生物における本質的な現象として捉えることができる。受精を行うための細胞間の相互作用が，有性生殖では広く見られる。この性的な相互作用は，性フェロモン，接合型物質，受精素，ガモンなどと呼ばれる化学物質によって制御される。これらの物質は非常に少量で高い活性と選択性を持っている。個体間の性的誘因物質については，1956年，Butenandtによって．bombycolがカイコの性フェロモンとして初めて単離·構造決定されて以来，多数の性フェロモンが発見されている。ミズカビの一種であるAllomycesは雌雄同株で，有性生殖では雌の配偶子のうと，雄の配偶子のうを同じ菌糸上に形成する。Machlisらは，雌の配偶子のうが雄を誘引する物質を確認し，これをsireninと名づけた（図1）。