高効率スピン分解光電子分光装置の開発と表面研究への応用

摘要

本稿では我々の開発したVLEED型のスピン分解光電子分光装置を紹介した。この方式のスピン検出器は高いスピン検出効率を実現することができるため，光の強度がそれほど強くなくてもスピン分解光電子分光実験が行えるというメリットがある。そして最先端の放射光源などを利用すれば高分解能でのスピン分解光電子分光実験も十分可能になることを示した。この高い分解能を生かして，磁性体超薄膜や，ナノワイア，ナノクラスターなど，これまで難しかった低次元強磁性体のスピンを分離した電子状態測定が可能になり，低次元性に起因する磁気異方性やスピンゆらぎなど様々な研究が進展すると期待される。また磁性体／非磁性体界面でのスピンの反射，伝搬などの研究は，スピントロニクス実現の鍵となるスピン注入の技術開発において非常に重要であるが，非磁性体超薄膜／強磁性体のような系でスピン分解光電子分光測定を行うことにより界面でのスピンの伝搬についての理解が深まると考えられスる。