中国景気で需給規模10年来の最高に歪な市況が二社合意方法の改善促す＝16年度のボンドバンカー需給実績から＝

摘要

昨年度，ボンドバンカーC重油の需給規模は10年来の高水準へ拡大した。 好調な中国経済などを背景に，邦船を中心に日本でバンカーを積み込む機会が増えたためだ。 c重油（180cSt）の需要量は実質580万kl強と集計され，680万kl近くに達していた1994年度（平成6）以来の最高になった。 前年度からは418％のプラスになる。 石油精製元売各社は拡大した需要に保税生産だけで対応したため，保税輸入は封鎖状態が続いた。 昨年度のC重油保税生産量も580万klを超え，やはり600万kl近くに達していた1994年度以来の最高になった。 前年度に対しては7．8％の増産になる。 保税輸入は商社が実施した2万klだけ。 元売には逆ザヤのリスクを冒してまで保税輸入を行う余裕はないというのが封鎖の理由だが，国内のHSC重油需給対策にボンドバンカー市場を活用することが本音のようだった。その結果，ボンドバンカー市場でも需給タイト感が先行し，日本積み市況が急騰する場面が何度もみられた。バンカー市況は原油相場の暴走に引っ張られ，日本積み10月の市況平均値237ドル／MTは24年ぶりの最高値更新。 その後も歴史的な超高値に居座るようになった。 また，12月と1月，3月には，シンガポールとの市況差が40ドル／MTを超え，日本積みの割高感が頂点に達した。 そうした歪な市況によって，新日本石油と日本郵船の二社合意価格は市況平均値を11ドル以上も下回る異常事態。 市況平均値並みで値決めしている大部分の個別交渉に衝撃を与えたほか，新日石と日本郵船に交渉方法を変更させるきっかけを与えた。両社は4月分から市況平均値前後に収まる算出方法に改善したほか，「二社合意価格」を二社間の「ポンドバンカー·ベース価格」へ変更している。