HAP触媒によるエタノールからのブタノール合成

摘要

今回，Ca/Pモル比1．64である非化学量論組成のHAP触媒を用いることで，1－ブタノールをエタノールから高選択的に合成できることを発見した．また，1－ブタノール生成のシミュレーションから，1－ブタノールはエタノールの2次の反応により合成されると推定された．さらに，エタノールから1－ブタノールを選択的に合成するには，エタノールの逐次反応を1-ブタノールで止める，すなわち逐次反応の進行を抑えるため，低温反応が適していることも確認できた．今後，反応条件の最適化やさらなる触媒設計により，1－ブタノールをより効率的に合成できると考えている．地球温暖化は，化石資源の燃焼により発生する二酸化炭素が主因と言われている．地球温暖化対策の1つの解決策として，バイオエタノールが世界的に注目されている．近い将来，バイオエタノール製造コストが大きく低減され，世界市場でバイオエタノール価格が原油価格より安くなる可能性も否定できなくなった．そうなると，HAP触媒にょるバイオエタノールから1－ブタノールを合成するプロセスは，石油化学をベースとした従来のオキソ法より経済的であり，省エネルギーかつ環境にも優しい合成法といえる．