移転近況報告

摘要

昨年の本誌5号に異動連絡をしていただいたのを良いことに，生来の筆無精を決め込み，異動通知を出していなかったことを思い出したので，本欄をお借りして,私の異動と近況報告をさせていただきたい。周知のように，独立行政法人産業技術総合研究所（産総研）は一昨年の4月1日に，旧工業技術院の一部,その傘下の15研究所および計量教習所の合併·再編により発足し，日本最大の公的研究機関となった。 しかし，その特徴は大きさよりは，研究部門，研究センター，研究ラボおよび研究系の4種の研究ユニットからなる研究組織にある。 「存続期限を特に設定せず,中長期の戦略実現に向けて一定の継続性を持って専門的な技術ポテンシャルを発展させる」のが部門ぞあり,「最長7年で研究資源を戦略的かつ重点的に投下し研究する」のがセンター，「最長3年で研究センターへと展開する」のがラボで,「関西地域の産業·研究集積に合わせて研究展開を図る」のが研究系とされている。分かり易く言うと。研究部門では技術ポテンシャルの維持·発展を通して"研究資源を戦略的かつ重点的に投下するに値しそうなもの"を見出し，それを研究ラボでは3年の間に"ものに成りそうかどうが'を見極め，良ければ，研究センターで7年の問に"発展させ極めさせる"と言うことである。 当然，この先には実用化やベンチャーの設立など実際的な産業社会への貢献があり，極めて目的指向型の組織となったと言えよう。 この変化は種々の長短は有るが,旧研究所間の壁を取り払い,領城間の連携·協力の円滑化には役立ったようである。少なくとも筑波では。しかし,規模の小さかった旧地域研究所,具体的には北海道,東北,中国,四国および九州の各センターでは，研究単位の細分化と独立性を加速することになり,地域センターとしての纏まりを欠く弊害を生むことになった。 現在,各地域センターは生き残りを賭け，ある特化されたもので特徴とまとまりをつくり,世界に発信できるナショナルセンター（NC）となることを目指している。