特殊鋼を支える非破壊検査--Ⅱ．非破壊検査機器の現状--1．超音波探傷機器

摘要

超音波という用語からは一般に、空中を伝搬する音で、人の耳には聞こえないほど高い周波数（20kHz以上）の音が思い浮ぶ。このため鋼の非破壊検査と超音波との関係は一般には想像しにくい。非破壊検査の分野においては、超音波という用語は、弾性波（縦波や横波などの機械的振動）を含むものとして広い意味で使われている。弾性波なら鋼内部を大きな減衰を受けずに伝搬すること、並びに減衰が小さいので弾性波を利用すれば鋼内部を検査可能であることは想像に難くない。実際の検査では、1MHz～20MHzの周波数帯が広く使われている。鋼の縦波音速は約6，000m/sなのでこの周波数帯に対応する波長は6mm～0．3mmと短く、ミリからサブミリメータのオーダで鋼内部を診ることができる。横波音速は約3，200m/sなので横波を使えば波長は縦波の約半分となる。ここでは超音波探傷技術の最近の話題や探傷機器についていくつか紹介する。