嫌気性バイオ法による揮発性有機化合物汚染土壌地下水の浄化システム

摘要

ドライクリーニングや半導体産業で溶剤や洗浄剤として使用されてきたテトラクロロエチレン（PCE）やトリクロロエチレン（TCE）等の揮発性有機化合物（VOCs）は発ガン性の疑いがもたれている有害物質であり、国内外で最も問題となっている土壌地下水の汚染物質のひとつである。 TCEやPCEは、比重が水よりも重く、粘性が低いため、貯留タンクや配管から漏れた場合、地表面から土壌内深くに浸透し、やがて帯水層に達すると、その一部は地下水に溶けながら、地下水の流れや拡散によって広範囲に拡がってしまう恐れがある。 このような広範囲に拡がった地下水汚染に対する対策としては、井戸から汚染地下水を汲み上げ、地上の装置で処理する、いわゆるPump＆Treatmentが行われる。 しかし、土壌·地下水中に浸透したVOCsは、その一部が土壌粒子に吸着されているため、井戸から地下水を汲み上げるだけでは短期間に浄化を完了することは難しい。 これに対し、地中で直接VOCsを分解する原位置分解処理の場合、土壌粒子の近傍で対象汚染物質を分解し、土壌粒子からの脱着と分解が平行して起こるため、揚水処理などの抽出処理に比べて大幅に浄化期間を短縮することが可能である。 特に、嫌気性微生物の働きによって原位置で汚染物質を分解する嫌気性バイオ法は、物理化学的な手法よりも安全で経済的な処理法として注目が集まっている。 当社が開発した嫌気性バイオ法によるVOCs（ここではPCEやTCE等の塩素化エチレン類を主対象とする）汚染土壌地下水の浄化システムについて紹介する。