昭和南海地震で湯室温泉の湧出は止まったのか？

摘要

本調査によって，1944牛の昭和東南海地震に伴って渇筆温泉の湧出が停止も′しくは減少したことがほぼ明らかとなった．それでは1946年の昭和南海地震では潟峯温泉の湧出は減少したのか，という新たに浮上した問題については，結局明らかにすることができなかった．この問題については．今後も調査を続けていく必要があるだろう．渇峯温泉よりも東側，つまり紀伊半島東部の温泉や地下水の変化も，この間題を解く鍵となるかもしれない．もし1946年昭和南海地震に伴って紀伊半島東部で温泉や地下水に異常が見られたのであれば，それよりも南海地震の震源に近い湯室温泉において異常が起きた可能性は高くなる．1944年東南海地震時の変化と併せて，紀伊半島東部でこのような調査を行う意義は大きいと考えられる．ただしその際は，終戦の混乱の中で起きた2つの地震を混同しないような地元に密着した慎重な調査が求められるだろう．今後もしばらくは，紀伊半島周辺で起きる地震に関連した温泉や地下水位の変化について調査を続ける予定である．そのような調査結果を公開していくと共に，一般の方々からも広く情報収集を行いたいと考えている．このようにして得られた数多くの情報を解析することによって，昭和南海地震における湯峯温泉の変化を解き明かす鍵が得られることを期待している．