温泉からみた金鉱床--鹿児島県北薩金銀鉱床区の例

摘要

鹿児島県北薩地域は日本有数の産金地帯ですが，この地域には多くの温泉が分布していることは，意外と知られていないのではないかと思います。そのうちのいくつかは，現在も金鉱床から湧出しています。また，現在温泉の湧出は認められませhが，王ノ山鉱床の直上の地表にはシンターが残っており，かつては中性の深部熱水が地表まで達していたことを示唆している所もあります。 なお，現在本地城東端に位置する霧島火山では，200 deg Cを超す中性の深部熱水を取り出し，地熱発電も行われています。 これらの，過去および現在の熱水系は，東進する火成活動で生成されたと考えられており（Izawa and Urashima，1983），本地域は，現在の地熱系と金鉱床をつくった熱水系を比較検討するには都合のよいフィールドです。 ここでは，本地域および周辺に産する温泉の主要化学組成を検討し，金鉱床に伴う温泉の特徴や，温泉からみた金鉱床の生成場などについて述べたいと思います。ここで紹介することは，金鉱床地域に分布する多くの温泉を用いて金鉱床の有望地域を絞り込み，探査に利用できないかということからはじまった成果の一部です。