海水中におけるカソード電位を負荷したTi-6Al-4V合金の疲労き裂伝播特性－第1報 大水深ライザーの材料選定に関する研究

摘要

（独）海洋研究開発機構（JAMSTEC）の深海地球ドリリング計画は，海上の地球深部探査船「ちきゆう」から地底のマントルまで掘り進むという壮大な計画であり，第一段階としての最大稼働水深は2，500m，将来的には4，000mの科学的ライザー掘削を目標としている．この水深4，000m級の大水深ライザーでは，自重の問題やハングオフ時の縦振動によるライザーの固有周期と波周期との共振問題が懸念される．これらの技術的課題を解決するには，大水深ライザー材料として比重が小さい材料を選択することが有効であり，チタン合金，アルミニウム合金ならびに複合材料などの鋼（高張力鋼やステンレス鋼）以外の材料の有効性についても評価する必要がある．また，渦励起振動(VIV：Vortex-Induced Vibrations)やハングオフ時の縦振動等による動的荷重や使用環境（海底から噴出する高温ガスやライザー管と接触する他の金属との異種金属接触腐食等を考慮）を考えると，大水探ライザー材料については海水中ならびに高温および電気防食した海水中かつ高引張平均応力下における疲労き裂伝播特性を把握する必要がある．特に，比強度，耐食性ならびにリサイクル性に優れたチタン合金は，第二次世界大戦後，工業化された比較的新しい金属材料であり，これらに関する基礎的データは十分に把握されているとは言えない．そこで，本研究ではTi-6Al-4V合金を供試材とし，大気中，海水中ならびにカソード電位を負荷した海水中における疲労き裂伝播特性について検討した．