結晶多形に基づく固相ESIPT発光材料の設計－ヒートモードによる有機発光スイッチ

摘要

私たちの生活を彩る多様な色のなかでも，有機蛍光物質が示す色純度の高い蛍光の色は，その美しさと鮮やかさから人々を魅了してやまない．また高感度での検出が可能であることから，マーカーやセンサーをはじゆとして，医学から機能材料まで多岐にわたる分野で有機蛍光物質の重要性が増しており，特に記録·表示材料として固体の有機発光材料への期待が高まっている．ただ，膨大な数の有機化合物がある中で，強い蛍光を示すものはそれほど多くはなく，さらに固体では熟失活が起きやすいため，強い発光を示す有機材料はさらに少なくなる．また発光過程は，結合性軌道から反結合性軌道に電子が移動した励起状態，すなわち分子として不安定な電子状態を経由するので，高い光安定性を持つことも必要となる．このため，固体で優れた特性を示す新規な有機発光材料が強く求められており，その開発が活発に進められている．さらに外部刺激による可逆的な発光スイッチャ発光色変化という機能を付加できれば，より機能性の高い記録·表示材料を実現することができる．しかし，現状ではスイッチ機能を持つ有機発光材料は極めて限られたものしか知られておらず，またその設計指針も定まっていない．