有機物施用歴の異なる灰色低地土転換 ダイズ畑の窒素収支

摘要

現在、水田と畑利用を繰り返す田畑輪換が 転作の形態として一般的になっている。ダイ ズは主要な転作作物の一つであり、北日本-東北地方の日本海側に位置する秋田県では、そのほとhど（95%前後）が水田転換畑で栽 培されている。近年、東北地方において長期 の田畑輪換により土壌窒素肥沃度が低下し、 ダィズ収量の低下を引き起こすことが指摘さ れている（住田ら2005)。マメ科植物である ダイズは根粒菌による共生窒素固定により大 気中の窒素を獲得する。一般に、ダイズは窒 素集積のうち20-80%を窒素固定に依存して いるとされ、Yoneyamaら(1986)によれば、 日本のダイズは平均して窒素集積量の50%を 窒素固定により得ている。一方で、ダイズは 子実の窒素含量が6-7%と高く、 400kg/10a の収量を得るには28-36kg N/10aの窒素の 同化が必要とされ（星1982)、水稲の14kg N/10a程度（収量600kg/10a時）に比べて窒 素要求量が格段に大きい。そのため、多収の ダイズは窒素固定由来の窒素のみならず土壌 中の窒素も多量に吸収し、そのほとhどは収 穫により圃場系外に持ち出される。結果として、転換ダイズ畑では圃場からの窒素損失が供給を上回り、窒素収支がマイナスとなる可 能性が高い。水田時には圃場の窒素収支は基 本的に供給と損失が釣り合っているものの、 窒素損失を引き起こす転換畑でのダィズ栽培 が長期的に繰り返された結果、土壌窒素肥沃 度及びダイズ収量が低下すると考えられる。