癌幹細胞の低酸素性二ッチ

摘要

幹細胞は自己複製能やストレス耐性，薬剤排出能などの特有の性質．幹細胞性（sternness)を持つ．こうした幹細胞性は幹細胞周囲の微小環境（ニッチ）からのシグナルと．幹細胞固有の転写因子セットによって規定される．正常幹細胞では幹細胞性は組織の生涯にわたる恒常性維持のために必要であり，その破綻は老化や癌化などを誘導する．一方．腫瘍組織に存在する癌幹細胞分画は，このような幹細胞性の作動メカニズムをも利用することで自己複製能や治療抵抗性．あるいは転移能を獲得する． したがって．癌幹細胞を標的とする研究を進める際は癌幹細胞と正常幹細胞．それぞれの維持メカ二ズムの異同を意識する必要がある．本稿では，二ッチシグナルとしての低酸素環境に注目し，正常および癌幹細が低酸素環境において維持されるための分子メカニズムについて解説する．