小型CTD等を装着した鰭脚類による海洋観測データの取得

摘要

近年，海洋生物にデータロガーとよばれる記録計をつけて，その行動や周りの環境についての情報を得る「バイオロギング手法」が盛hに用いられている。バイオロギングとは，バイオ（Bio,生物）とロギング（Logging,記録をとる）を組み合わせた言葉で，つい最近になって用いられるようになった。バイオロギング研究の初期段階では，動物が潜水したときの最大到達深度や特定深度到達回数などの記録が得られるだけであったが~(1,2))，次に開発された時計内蔵型アナログ式記録計（Time Depth Recorder: TDR）によって，深度データが時系列で得られるようになった~(3,4))。その後，TDRによってキタゾウアザラシMirounga ancustirostrisの2ヵ月半にわたる長期連続潜水記録が得られ~(5,6))，TDRの小型化に伴って海鳥などにも適用されるようになった~(7,8))。キタゾウアザラシのような大型動物においては，遊泳速度を記録するための記録計とTDRを同時に装着することにより，同一個体から多次元のデータを記録することが可能となった~(9))。しかし，アナログ式のままでは多チャンネル化，および，小型化が困難であったこと，その一方でマイクロエレクトロニクスの急速な発展により，デジタル情報処理技術が普及してきたことから，記録計のデジタル化が進められた。現在では深度や遊泳速度だけでなく，加速度~(10~12))，温度~(13,14))，地磁気~(15,16))，心拍~(7))，血液中の酸素分圧~(18))といった多種多様なパラメータを感知するセンサを組み合わせることができ，画像を記録することも可能となった~(19,20))。