日本産南方系ホンダワラ属2回目：南方系ホンダワラ属の形態

摘要

多くの海藻はその生活環のなかに単相体（n）と複相体（2n）をもち，それぞれの核相の生殖細胞をつくり世代交代をする。しかし，ホンダワラ属を含むヒバマタ目（Fucales）は，複相体に生じた生殖器床の中で減数分裂を行い卵と精子が形成され，藻体上で受精し発生するため，単相体がない。ホンダワラ属の場合，生殖器床の表面で受精した受精卵は細胞分裂を繰り返し，仮根（rhizoid）とよばれる組織を形成して海底の基質に着底する。着底後ざらに細胞分裂を繰り返し，付着器と茎を形成する。るの後，茎葉（cauline leaf）とよばれる扁平な組織が茎から生じる。この茎葉は，種によりそのまま葉となり，後に生じる枝と区別できるものと，ヤツマタモクSargassum patensなどのように，発生初期では葉と枝の区別が明確でなく茎葉から葉と枝が分化し藻体を形成していくものがある。着底後の発達過程は寺脇らによって多くのホンダワラ属の種によって観察されている~(1~6))。ホンダワラ属は藻体頂端に位置する生長点細胞によって生長し藻体を形成していくが，形態的に膜状や線状が主流の海藻のなかで，ホンダワラ属は外部形態が高度に発達し，茎と主枝，葉と気胞なども明確に分化している。