有機伝導体における光誘起相転移の超高速レーザー分光

摘要

絶縁体一金属一超伝導あるいは強磁性体一馬磁性体といった異なる物質相か，ひとっの物質系で現れることが，強相関電子系物質の魅力である1）3d遷移金属酸化物や有機物質では，電子間のクーロン斥力によるエネルギーが，電子の運動エネルギーと桔抗しているため，電子は，局在（秩序）と非局在（無秩序）の狭間にある小　 本稿で紹介する，超短パルスレーザーを用いた光誘起絶縁体一金属転移2，3）は，光励起状態を介して，モット絶縁体や電荷秩序などの電子の秩序状態を，過渡的に融解するダイナミックな光誘起現象である小　 電子の秩序は，磁気秩序や超伝導と競合していることも多いため，その光融解は，新たな秩序の再構築をも期待させるりしかし，そのような凍結した電子の融解によってつくられる光誘起"金属''状態は，多くの場合寿命が短く，その電子的，熱力学的な性質ほよくわかっていない．．本稿では，二次元有機伝導体における光誘起絶縁体一金属転移に対象を絞り，赤外光領域のポンププローブ分光から，なにがわかるのかについて紹介したい．