レアメタルのメカノケミカル回収

摘要

Y，Nd，Sm，Eu，Coなどの希少金属（レアメタル）は，触媒，磁石，半導体，エネルギー変換材料など，いわゆる機能性材料の製造には不可欠な素材である．レアメタル資源は世界的にも偏在しており，その安定供給および確保は工業立国にとって緊急課題である．とりわけ我が国は天然資源に乏しく，その殆どが海外依存である状況は深刻である．しかしながら一方ではレアメタルを含む製品は多く使用されており，これらはやがては廃棄されることから都市資源あるいは人工資源として生まれ変わる可能性を持っている．天然資源からレアメタルを分離·精製する方法は，日々効率向上などの課題はあるものの，先人が達成した"選鉱と製錬"技術によってある程度かなえられる．この技術は，鉱石の粉砕から始まり，比重分離，磁気分離，浮選などで鉱石中の有価成分を濃縮した後，製錬によって高純度化するものである．更に純度を上げるには，高度な化学的あるいは物理的手法が用いられる．このような選鉱製錬技術は，廃棄物に対しても適用可能であり，一部では実用化が進hでいる．いずれにしても回収率やエネルギー効率を向上させるには対象物の組成，形態にあった選別·精製手法の選択とその高度化が重要となるが，選鉱製錬プロセスでは粉砕が必須であり，この工程を効果的に利用することがその後の各工程での成果を左右する．このことは廃棄物からの有価物回収·リサイクルにも適用でき，粉砕技術の重要性が挙げられる．筆者らは粉砕を利用してメカノケミカル（Mechanochemial，MC）現象を誘起し，それを天然並びに人工資源に適用して有価物回収を容易にする手法開発研究を進めているが，その中からレアメタル回収に焦点を当てた研究の一端を紹介する．