自動車部品の複合表面改質による疲労強度向上：疲労限度向上指針の金属ベローズへの応用

摘要

金属ベローズ（以下，ベローズと記す）とは，蛇腹状に成形された柔軟な機械要素部品であり，伸縮性·ばね性·気密性に優れている．図1にベローズの外観および縦断面形状を示す．一般に，ベローズは軸，横，回転，ねじり方向の動きを吸収することができるため配管の継手部品として様々な分野で使われている．最近の自動車分野においては，信頼性の高いシステムの必要性から気密性の高いシールが要求され，ゴムや樹脂などの高分子材料のシールに替わってベローズなどの金属シールが使われ始めている．特に，厚肉小径のベローズは，小型高圧ポンプの伸縮シール部品として期待されている．しかしこれまでは，疲労限度が不十分なため疲労限度向上による小型化には限界があり実用化に至らなかった．一方，安藤らは，高圧機器や自動車部品の疲労限度を向上させるために疲労破壊のプロセスとその抵抗因子を明確にし，新しい疲労限度向上指針を提案した．そこで，その方法をベローズに応用することにより，ベローズの疲労限度を向上させることができるか否かの検討を行った．本稿では，ベローズの疲労限度を向上させるうえで効果の大きかった，①冷間加工後の再結晶を利用した結晶粒の微細化の効果，②静的強度が高いセミオーステナイト系析出硬化型ステンレス鋼SUS631を適用したことによる高硬度化の効果，③小径ベローズのような小径管の内面に対して，反射板を用いた反射ピーニングの効果について紹介を行う．