ストレス適応形成に関わる機能分子としての脳内5-HT_7受容体の役割

摘要

ストレス性精神疾患の病態生理や治療メ力ニズムにおいて，脳内serotonin (5-HT)神経系が重要な役 割を担っていることは広く知られている.現在，5-HT受容体は，5-HT_1から5-HT_7の7種のタイプに大別されて おり，さらにこれら受容体タイプにはサブタイプが存在することも知られている.5-HT?受容体は，5-HT受容体ファミリーの中で最も新しく発見された受容体タイプであり，その生理的役割については未だ不明な点が多い. 近年，5-HT,受容体に対する選択的作動薬や拮抗薬，および5-HT_7受容体ノックアウトマウスが開発され，5-HT7 受容体機能の解明に役立てられている.本稿の前半では，これらの実験ツールを用いて，情動調節における5-HT_1受容体の役割について検討された報告について紹介する，一方，元来，生体は，外界からのストレス刺激に抵抗し恒常性を維持するための生理機構（ストレス適応機構）を有しており，この機構の減弱や破綻がストレス性疾患の発症に関係していると考えられている.したがって，ス卜レス適応に関与する脳機能を考究することは， ストレス性精神疾患の予防。治療法の開発に役立つことが考えられる.本稿の後半では，脳内5-HT_1受容体とストレス適応機構との関連性に着目した，最近の我々の研究成果について紹介する.