新規抗うつ薬の作用·検

摘要

要約：うつ病の薬物療法は，現在，選択的5-HT再取り込み阻害薬（SSRI)と，選択的NA, 5-HT再取り込み阻害薬（SNRI)が主流である.しかし両薬剤を駆使しても，うつ病の寛解率は60%以下であり，多くの治療抵抗性，いわゆる難治性うつ病の治療には未だ課題が多い.筆者は，難治性うつ病や不完全寛解の特徴である，億劫感ゃ生きがいの喪失感の回復には報訓系のドパミン（DA)神経伝達の回復が必要と考えている.最近，開発中の新世代抗うつ薬（escitalopram, duloxetine, mirtazapine, bupropion)にこれら難治性うつ病の治療の選択肢として期待が高まっている.そこで，これら新規抗うつ薬の基礎薬理データ（DA系への作用を中心として）および臨床データを紹介し，それぞれの抗うつ薬としての位置づけを考察した.まず，escitalopramは最も5-HT再取り込み阻害作用が強く，臨床的にも効果発現が早く，安全性に優れている.Duloxetineは，SNRIであり強力な抗うつ作用を持つことから，第一選択薬としての位置づけになる可能性がある.Mirtazapineは，alpha_2，S-HT_(za), 5-HT_(2c) 受容体に対するアンタゴニスト作用を有し，脳内NA, 5-HTさらにDAの細胞外遊離を促進する.臨床効果は即効性であり，ヒスタミンHi受容体を阻害することで鎮静作用を有し，激越型，重症のうつ病にも有用と考えられる.Bupropionは，DAとNAの再取り込み阻害作用を有し，DA神経伝達の強化，DA神経の回復に有用と考えられる.