腰部脊柱管狭窄に対する疫学的研究

摘要

腰部脊柱管狭窄（以下，LSS)は脊椎疾患の中で最も頻度が高ぐ高齢社会に伴い患者数は急増している。しかし，確立された診断基準がないため，潜在患者が少なからず存在していると考えられる。そこで今回，LSSの頻度を推定し，診断や治療の実態と患者の日常生活や精神面への影響を把握する目的で，大規模調査を実施した。【方法】全国に在住する40歳以上の男女227631人に対し調査票を配信し，回答が得られた80000人の回答者を対象に，LSSの診断サポートツールによりLSSと判定した1017人を抽出した。これらのLSSと判定した患者に対し，受診や治療に対する意識を明らかにするためのインターネット調査を実施し，回答の得られた519人を解析対象とした。【結果】国内における40歳以上のLSS推定患者は約240万人であった。受診経験のある人のうち，LSSと診断されている患者は3割程度であり，7割近くがLSSと診断されていない可能性が示唆された。患者の多くは，間欠跛行の症状を示していた。また，間欠跛行は患者が最も悩hでいる症状と合致していた。生活面では，外出や歩行の困難など基本的な日常生活が脅かされ，精神的苦痛を訴える患者が多かった。薬物療法，ブロック療法，装具療法，理学療法などの治療に対しては必ずしも満足してはいなかった。【結語】LSS推定患者は，全国で約240万人であった。LSSと診断されている患者は3割程度であり，7割近くがLSSと診断されずに十分な治療を受けていない可能性がある。