フルボキサミン投与によりBehavioral and Psychological Symptoms of Dementia（BPSD）の改善が見られた希死念慮を伴うアルツハイマー型認知症の1例

摘要

認知症では，記憶障害に代表される中核症状に加え，興奮，妄想，俳などのBPSD（Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia：認知症の行動·心理症状）が認められる。BPSDの頻度は高く，アルツハイマー型認知症の50～90％の患者に認められることが報告されており，患者本人を苦しめるだけでなく，介護者の負担を著しく増大させる直接的な原因となっている。一般に，BPSDの治療には非定型抗精神病薬が用いられてきたが，2005年にFDAから非定型抗精神病薬が老年期患者の死亡率を上昇させることが報告されて以降，抗精神病薬による治療はより慎重さが求められている。したがって，BPSDの薬物療法における治療選択肢の検討ほ臨床上重要な課題であると考えられる。