Nonalcoholic Steatohepatitis (NASH)への実験医学的アプローチ

摘要

非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic fattyliverdisease : NAFLD)は，現在欧米のみならず我が国においても最も高頻度にみられる肝病変であり，一般人口の約10-25%に存在する1)とされる． NAFLDの中では最も軽症である脂肪肝は予後良好であるが，非飲酒家であるにもかかわらず肝細胞への脂肪滴の沈着，肝細胞の風船様腫大，マロリー体および肝臓の線経化など，アルコール性肝炎類似の組織像を呈する非アルコール性脂肪性肝炎(nonalcoholic steatohepatitis :NASH)6)は，肝硬変や肝癌への進展がみられ予後不良である.一般にNASHは肥満,糖尿病,高脂血症を背景として起こるとされるが，大西らの最近の検討によれば，肥満と高度のインスリン抵抗性を示すNASH症例が約60万人，脂質代謝異常を背景としてインスリン抵抗性を伴わないNASH症例が約20万人全国に存在すると推計されている.