成人発症の微小変化型ネフローゼ症候群における組織学的相違と臨床予後の検討

摘要

Minimalchange nephrotic syndrome（MCNS）患者においては組織学的所見による臨床予後の違いがしばしば報告されている。小児MCNS患者ではメサンギウム領域へのIgM沈着やmesangial hypercellularityの有無が治療反応性や予後に影響するとの報告が散見される。 しかしながら，成人MCNS患者における組織学的相違と臨床予後については一足の見解が得られていない。 そこでわれわれは，自験例を用いて成人MCNS患者における組織学的相違と治療反応性および予後について検討した。 初発成人MCNS自験例47例を対象として，病理組織学的変化を正常コントロール5例と比較し，各種組織学的変化とステロイド治療に対する治療反応性や寛解維持期間，再発回数などの臨床予後との関連を比較検討した。 IgM沈着やメサンギウム細胞数および糸球体内総核数について比較した結果，寛解維持期間と再発率に有意差は認められなかった。 またメサンギウム基質の増加の程度に関する検討でも，その増減を予後判定因子としてあげることはできなかった。 今回のわれわれの結果からは，成人MCNS患者において，IgM沈着やメサンギウム細胞数増加などの組織学的変化が治療反応性や臨床予後に影響を与えない可能性が推測された。