石灰釉に酸化鉄を添加した鉄釉の発色（第1報）--基礎釉組成が吸収係数に及ぼす影響

摘要

石灰粕に酸化鉄を添加した鉄和の発色を，吸収係数を測定することにより調べた．酸化鉄添加量が1mass％の場合には，紫外部にピークを有する大きな吸収の裾と，440nm付近にピークを有する吸収が認められた．また，紬組成のAl_2O_3成分が変化すると，それに伴って吸収係数は大きく変化した.これに対し，SiO_2成分が変化した場合には，吸収係数はほとhど変化しなかった．酸化鉄添加量が8mass％の場合には，吸収が大きく，十分なデータは得られなかったが，添加量が1mass％の場合と同様に，Al_2O_3成分の変化に影響されて吸収係数が大きく変動すること，SiO_2成分の変化では吸収係数の変化は小さいことが確認された．従来の研究では，反射率から推測される吸収をもとに発色の変化が調べられていたが，本実験において散乱などの因子を除いた吸収係数自体を得ることができた．その結果，吸収係数は基礎和組成の変化とともに規則的に変化すること，鉄イオンの吸収と関連付けて考えられてきた外見の色の変化のうち幾つかの変化は，吸収係数のみでは説明できないことが分かった.今回得られた吸収係数の変化と基礎紬組成の関係は，効果的な発色の制御に有効な情報と考えられる.