電気防食用Mg－1mass％Mn合金陽極の淡水中での溶解挙動

摘要

Mg－1mass％Mn合金陽極を淡水中で使用することを想定してその流電溶解挙動を調査した結果，次のことが明らかになった。 この合金陽極の短所は，局部溶解になりやすいことおよび電流効率が低いことであるが，これらの現象には表面に存在する不純物および使用電流密度が深く関与していた。 ケイ酸を含む淡水中でこの陽極を0．1mA／cm~2以下で使用したときには，陽極表面の平滑で不純物がほとhどない部分にケイ素とマグネシウムが主成分で非晶質の平滑な皮膜が生成した。 一方，酸素，炭素，ケイ素，アルミニウムなどの不純物元素が多量凝集している部分では，これらがカソードとなる局部電池が形成されて陽極が自己溶解した。 この部分の溶解速度は，皮膜が形成した部分よりも極めて大きく，その結果として局部溶解となった。 なお，今回の観察では，Mnがカソードとなる局部電池は認められなかった。 この陽極を精密研磨して，その表面の不純物と酸化皮膜を極力減らして0．1mA／cm~2以下で使用したときには，ほぼ均一に全面で溶解がスタートして全面に皮膜が生成し，成長した。 この条件下では，少なくとも3か月間，局部溶解は抑制され，電流効率は通常値の2倍の約80％を示した。 これに対して0．3mA／cm~2以上で使用したときには，同様の皮膜は生成せず，表面は部分的にMg（OH）_2を主成分とする白色の溶解生成物に覆われ，溶解面は凸凹となり，電流効率は低値を示した。