海外の電力自由化動向

摘要

日本では2005年4月に電力小売部門の自由化範囲拡大，日本卸電力取引所(JEPX)及び電力系統利用協議会(ESCJ)の本格運用が開始され，電力自由化，すなわち電気事業の市場化の流れは着実に進展している。 一方，欧米では1990年ごろからあい次いで電力自由化が進められている。 欧州では2003年6月に制定された「改正EU電力指令」に基づいて各国で法制化が進められ，小売部門の自由化が順次進められている。 欧州の電力取引所は2005年11月時点で12存在し，それらが加盟する組織としてEuroPEX (European Power EXchanges)が設立されている。 各国の動向としては，まず英国では，2001年にプール制が廃止されNETA (New Electricity Trading Arrangement)を導入し，さらに2005年にBETTA (British Electricity Trading and Trans mission Arrangements)に移行した。 ドイツでは1998年に小売全面自由化が実施された後，国内の電力会社間の競争が激化して一時的に電気料金は下がったが，電力会社のM&Aの結果，寡占化が進hだ。 米国では州ごとに電力自由化に対する実施状況は異なるが，2003年3月時点で17州とワシントンDCにおいて小売自由化が実施されている。 連邦大の動きとしては，2005年8月に「2005年エネルギー政策法」が法制化され，系統信頼度基準の設定，送電施設に関するFERC (Federal Energy Regulatory Commission)への許認可権限，送電インフラ投資促進制度，PUHCA (Public Utility Holding Company Act)の廃止及びPURPA (Public Utility Regulatory Policies Act)の改正が実施された。 その他地域として，本稿では，韓国，中国，シンガポール，インドネシアの動向についても簡単に触れた。 電力自由化制度は，各国の事情に応じて，ある程度，試行錯誤的に変更·調整していかざるを得ない面はあるが，海外の様々な形態と影響を評価しておくことは，日本で2007年以降に予定されている小売全面自由化の検討において，極めて有意義であると考えられる。