Ralstonia solanacearumによるニガウリ青枯病の発生

摘要

1999年10月，沖縄県国頭郡今帰仁村で栽培されていたニガウリ（＝ツルレイシMomordica charantia L．，品種：汐風）において，生育が衰え萎凋する細菌病が発生した．発生場所は，緩い傾斜地に建てられたビニルハウス群のうち，低地側にある水はけの悪いハウスであった．発病したニガウリは白板で栽培されているもので，収穫直前になって全身が萎凋し，のち枯死した日　 本症状が発生したハウスでは，多くの株でこの症状が発生し，収穫できなくなるほどの大きな被害が生じた．1999年に本症状が発生したハウスでは，その後も毎年発生しているが，他のハウスへの発生の拡大は起きていない小　 さらに，罹病株を抜き取り，改めて移植した健全筒が発病したことから，土壌伝染性が疑われた．国内ではPseudomonas syringae pv. lachrymans （Smith ＆ Bryan 1915）Young，Dye ＆ Wilkie 1978によるニガウリ斑点細菌病（日本植物病理学会，2000）の発生が知られているが，本症状とは明らかに病徴が異なっていた．本症状と類似の病徴を調査すると，Erwinia tracheiphila （Smith1895）Bergey，Harrison，Breed，Hammer＆Huntoon1923による青枯病（Bradbury，1984）が該当した．この病害は，ウリ科作物に甚大な被害をもたらす重要病害であるが国内には分布しておらず，且tracheiphilaがニガウリで発生した記録も見当たらないいそこで，本病の病原細菌を明らかにするために各種試験を行い，Ralstonia solanacearum（Smith1896）Yabuuchi，Kosako，Yano，Hotta ＆ Nishiuchi1996による新病害であることを明らかにしたので報告する．