水域の公益性から考える生態系サービスの保全と活用 －漁業者と市民の共通目標となりえるか？

摘要

「生態系サービス」が，水産学の研究や社会との接点の水産政策にもたらす展開について，水域の環境保全や公的位置付け，漁業者と市民の関係性を中心に論考する。 2．水域の公的空間の環境保全「海や川の空間の水塊や水底，生息する生物は，誰の所有物か？ 誰が何の目的で管理し，保全や利用するのか？ 」の命題を，日本の漁業の現状や社会情勢の変化のもと，改めて考える必要がある。 O業がおこなわれている水域の大半は“公有水面’’である。 陸上に造られた養殖池の水面は，水底の土地の権利があり，その上に水が張ってあるのだが，河川や海の天然水域は，漁業権の免許を得て漁業に使用したり，権利関係はローカルルールも多いがレジャー利用されたりしてきた。 また，埋立申請がなされて陸化して土地造成が行われ水域として廃止されてきた。