博物館と生態学(14) 地域の博物館が担う自然史研究の意義

摘要

博物館は、展示、教育、資料収集、保存と並hで、研 究活動をも行う機関である。しかし日本には伝統的に、 設置者である行政による、博物館の研究機能の軽視とでも言うべき状況がある（糸井川1993 ；日本学術会議動物 科学研究連絡委員会、植物科学研究連絡委員会2003)。それは地方自治体の公立博物館において、より顕著であ る。'こうした状況に対して山崎（2000)は、博物館は地 域において自らの研究活動に対する市民およぴ行政のデ マンド（需要'要請）をリードする必要があると指摘した。 10年後の今日、状況はますます厳しくなつており、博物 館が研究機能を維持するには、その需要を自ら積極的に 創出することを迫られていると育えよう。そのような中 で、博物館がコーディネータを務め、多くの地域住民と ともに調査を行うプロジェクト組織型の自然史研究の有 効性（布谷2010)や、自治体の自然環境保全、環境教育 施策に博物館が積極的に関わり、行政や市民団体との連 携の一翼を担う形で博物館が存在感を示すことの必要性 (浜口 2009)などが改めて指摘されている。