家畜繁殖技術開発と実用化

摘要

家畜繁殖技術として開発され、かつ、実際に実 用化された最新技術としては、牛の体外受精があ り実際に体外受精卵が新鮮-凍結胚として販売さ れている。一方、ヒトの体外受精は、その技術開発の功績が認められ、2010年に英国のEdwards 博士がノーベル赏（医学生理学賞）に輝いた事は 記憶に新しい。我が国の新生児の約40人に1人 が体外受精によって生まれており、技術開発とそ の実用化が旨く進行している良い例である。この ヒトの体外受精は、不妊治療の一環としての研究 であり、例えば、世界初の体外受精産子であるル イーズの両親は9年間自然妊娠がかなわず、患者 の排卵卵子を体外で受精させる体外受精に望みを 託したとされており、主に排卵卵子（体内成熟卵 子）を用いた研究が中心であった。しかし、家畜 の場合は、食肉処理場に出荷される雌畜（国内で 年間に約800万頭の雌豚、約22.5万頭の雌和牛） の卵巣内に多数存在する未成熟卵子（卵巣1個当 たり、豚で約20個、牛で10個）からの産仔生産 に重点が置かれている。一方、2012年にこれも ノーベル賞（医学生理学賞）に輝いた英国ケンブ リッジのGurdon卿の「クローン力エル」で久し 振りに脚光を浴びた体細胞ク口一 ン家畜生産技術 については、最先端の家畜繁殖技術として開発さ れたにも関わらず、その実用化には目途が立って いない。本編では、体外受精およびクローン技術 という家畜におけるバイオテクノロジーの王道と も言うべき家畜繁殖技術に大学院生の頃から35年間に渡り携わった経験を元に、豚の体外受精を 中心に、体細胞クローン家畜生産技術にも少し触 れ、これらの家畜繁殖技術開発と実用化について述べる。